◆第四章◆
続いてアクラムがあかねの元に放ったのはシリンだった。
すでに2枚の札を手に入れ、八葉との絆も深まりつつある神子達は
シリンに対しても一歩も引かない対峙を繰り広げていた。



「なぜ、そう言い切れるんだい?力もないただの小娘に何がわかるっていうのさ。」

「そうかもしれないけど、でもあきらめない!絶対!」



三度放たれた神気は、シリンの覇気を遙かに凌駕し、
京全体を覆い隠すほどに強さを増していた。
しかしながら、神気に隠れたあかねの悲痛なまでの嘆きは
アクラムだけには伝わっていた。


「我らを憐れむのか?我らをそのような蔑んだ眼で見るのはやめろっ!!!」


それまで水鏡からあかね達とシリンのやりとりを黙視していたアクラムは
いらだちを隠すことを忘れ、思わず水鏡の波面を右手ではね除け、あかねの姿をかき消した。

まるで薄いベールのように水滴が宙を舞い、
そして地面に跳ね返る音が洞窟に響いた。
瞬間、アクラムは我に返り、誰に言うでもなく自分自身に言い聞かせた。

(ふっ。・・・気にするなどおかしなことだ。。。
なぜこの私があの娘の眼、あの娘の悲しみに満ちたあの瞳を恐れなければならないのだ。)




2、3、呼吸を降ろすと、またいつものように仮面の内側にその表情を隠した。






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