(注意書き)
※ネタはサマーライブ(土日とも)がメインでございます。でもオータムライブや漫画版からも節操無くネタを引っ張って

来てしまったので、それらを見聞きされてない方には意味不明な話と思われます。すみません…。
※アクラムとあかねは既に出来上がり気味を前提としてお願いします。したがってアクラム×あかねを受け付けない

方には、ますます意味不明な話と思われます。読まないでください…。
※逆に「アクラム様は素晴らしい!完全無欠のお方よ!」という信念を持たれている方にもお勧めできません。そこ
んとこよろしくお願いします。












最近、鬼の首領は少々焦り気味である。

今の季節は夏。しかし神子を召還した春から既に季節が一周した後の夏だった。だらだらと戦い続けて決め手のな

いまま、いつしか時間が過ぎていってしまったのだ。
しかも鬼一族は現在人手不足中。しばらく前から一族でメインに働いているのは、なんと鬼の首領その人だけだった

りする。セフルあたりは「僕もお館様と一緒に…」とよく希望を口にしているのだが、とある大きな力が働いていて、その
望みはこれからも叶いそうにない。

召還した龍神の神子が、アクラムの「女の好み」にヒットしていたことも長丁場の一因ではあった。
「心持ち気が強い方が良い」「歯向かってくるくらいが丁度いい」「負けん気の強いのが好き」という、若干特殊な嗜好

性を持つアクラムに対し、現代日本出身で恐れを知らない年代の神子は、ことある毎に彼のツボを刺激してしまった
のだ。
その度にツメの甘いまま「まあ、今回は見逃してやろう」という気分にさせられたアクラムは、高笑いとともに去って行

くのがパターンになってしまい、「私に従わぬのなら殺すまで」と言っていた初期の頃と同一人物とは思われないほ
どの変貌ぶりを見せている。
おまけに神子は神子で、敵となる鬼の首領に恋をするというイバラ道を進む運命に弄ばれた。もちろん途中でその道

を引き返そうとはしたのだが、一度踏み込むと抜け出すことが非常に困難な道のりであることが分かってきて、腹を
括ってその道を突き進むことにしたという経緯がある。

とりあえず、敵対行為を続けながらも二人の関係そのものは徐々に進行してきていたというわけだ。
いわゆる神子の言うところの「初でぇと」は昨年の文月。満天の星空の下での逢瀬が、互いの心の距離を一気に縮

めるきっかけだった。
その後も二人は、時には敵同士として八葉と共に対峙し、またある時には八葉の目をかいくぐって密会を果たすとい

う、二重生活のような矛盾した行動を続けてきた。誘い出すのはいつもアクラムの方からで、覗きの手段を持つ彼は
八葉や星の姫の隙を突いて神子にアプローチを仕掛け、神子は「アクラムに従うことにした訳じゃないから」と言いつ
つそれに応じてきたのである。

ただ諸般の事情により、去年の秋以来、二人きりの時間を過ごす機会を得ていない。
あの時は秋の盛りで、紅葉に染まった京を二人で眺めながら語り合った。神子をちょっと怒らせて、アクラム好みの

眼差しを引き出すのも楽しいものだった。シメにいつも通りの所有物宣言をしておけば、神子は迷いと戸惑いの混じ
った表情で、それでも少し頬を染めながら自分を見つめ返してきたものだったと、今になってしみじみ思い出される。


…しかして夏である。

神無月のとある一大プロジェクトのための準備が忙しかったとはいえ、逢瀬を遂げられないまま半年以上経過してい

る。あまりに長期間神子を放置しておいたら、他の男に走られかねない。
ある夜アクラムの見た「自分と同じ顔・同じ声をした別人」に神子を奪われるという気分の悪い夢は、彼の危機感をは

っきりと浮かび上がらせていたと言えよう。

――冬までには、決着をつける。
アクラムは決心した。


そんなこんなで先日、久しぶりに龍神の神子のもとへと赴いたのだが、その日は暑い日で、打ち水に興じていた地

の青龍と天の朱雀に派手に水をぶっ掛けられた。挙句、二人の喧嘩に巻き込まれて道行きを邪魔された。
なれば次こそはと、珍しく虫の音も響く涼しげな日に神子を奪いに行くつもりで土御門を訪れれば、今度は地の白虎

に邪魔された。と言うより、たまたまそこにいた地の白虎と女性談義などしているうち、あの男特有のムードに呑ま
れ、気付いたら神子にも逢うことなくいつの間にか帰ってきてしまっていたのだ。

…何をしに行ったのだ、私は。

このままでは埒が明かない。
場当たり的に事を進めてはいけないと、アクラムは慎重に手順を踏んでゆくことにした。


この時代、何かを為そうとするならば、まずは占いによって運気を計ることから始めるのがセオリーだ。
結果、目的の達成は葉月八日が最適と出た。その七日前には京よりやや離れた摂津国辺りまで出かけての所用

がある。多少慌しいスケジュールになるが、仕方がない。
ともあれ今度ばかりは誰に邪魔されるのもごめんだった。
少なくとも神子の身辺にいる可能性の高い天の青龍は確実に遠ざけておきたい。地の白虎も、運悪くまた遭遇すれ

ば面倒なことになりそうだが、奴は2年に1度くらいしか出現しないので次は大丈夫だろうと判断した。


そしてついにその日を迎えた。
目論み通り、天の青龍には何らかの用事が発生するように仕向けておいた。屋敷にいることの多い地の朱雀も、何

故か急に親密になった天の朱雀・天の玄武とともに、公に発表する楽曲の修練とやらに出ている。
他の八葉もそれぞれ別の場所にいるのをイクティダールが確認してきた。
ちなみにシリンとセフルは「押すと言葉を語る札」やら「希少な五芒星型の団扇」やらを入手するために、今日は早朝

から出かけて行ったので既にいない。
肝心の鬼の首領も神子を口説き落とす為の詩歌や台詞の練習に努め、自分を引き立てるための衣装もそれはそれ

は数多く取り揃えた。
まさに準備は万端、いざ出陣!の気負いで、彼は出発したのだった。




これまた諸事情で予定より四半時ほど遅れはしたが、今回こそは無事、神子の部屋の前まで辿り着くことができ

た。
御簾越しに感じる気配は紛れもなく神子の神気。都合の良いことに、星の姫を含め他の者は室内にはいないらし

い。

「…だれ?そこにいるの」

こちらが行動を起こす前に神子の誰何の声がかかる。以前に比べると格段に感覚が鋭くなってきているようだ。神子

としての成長の証だろう。
だがそもそも一年以上も「龍神の神子」をやっていればそれも当然なのだが、今の神子はひとえに自分の手によって

育まれてきたものだと勝手に解釈しているアクラムは、いたく自己満足を覚えていた。

「――私だ」
「え…アクラムっ!?」

ずだだだっ、と廂に駆け寄る足音が響く。途中で几帳の倒れる鈍い音と、いったぁ〜!という神子の声がした。
それらを小さく笑いながら聞き流し、簀子に腰を下ろしたところで御簾が跳ね上がる。
しばらくぶりにプライベートで顔を合わせた彼女の興奮した様子を見れば、己の危惧が杞憂であったことが明らかで

あった。
若干口元を緩ませながら、神子に向かって腕を伸ばす。泣きそうな顔に変わって縋り付いてきた少女が愛らしかっ

た。

予測していたより容易く進みそうだと、神子を抱きとめながらアクラムはほくそえむ。こんな具合になるのなら、しばら

く二人で「でぇと」できなかったのも怪我の功名だったかもしれないと思い直した。
つまるところ、惚れた弱みというやつだ。
特に女は、惚れた男に会うためならば、年に数回も大枚をはたかなくてはならなくても、その逢瀬にいかな不満があ

っても、最終的には約束の場所へとやって来る、不可解な生き物なのだから。


――それはさておき。


「私の神子…」

お得意の低音セクシーヴォイスで耳元に囁きかける。
神子がこの自分の声に弱いのは知っている。案の定、びくりと身体を震わせた少女の体温が、急激に上昇したのが

分かった。
一瞬、このまま部屋に連れ込んで事に及んでしまおうかと考えたが、そこはそれ、ネオロマンスコードという天の理

がある。いくら第一作では恋愛対象にならなかったアクラムといえども、その呪縛から逃れることは不可能であった。

「久方ぶりの逢瀬がこのような場所では、風情も無い…行くぞ」

屋敷から誘い出すため、適当な口実をつける。立ち上がって神子の肩を抱いたまま移動しようとすると、以前はすん

なり自分について来た彼女が、今回は何故か抵抗する様子を見せた。

「…どうした?」

呼びかけても返事をしない。それどころか、先程までと違って目すら合わせない。何か逡巡しているようだったが、こ

こで相手を屋敷から連れ出さねば、計画が第一段階から頓挫してしまう。
さくさくと進行させたいアクラムは半ば強引に神子を抱え上げると、そのまま予定の場所までテレポーテーションして

しまった。当然、神子は驚きと抗議の声を上げたが、後で適当にフォローを入れれば済むだろう、ぐらいにしか、その
時アクラムは考えなかった。




移動先は秋にも二人で訪れたあの場所。山中の森が一部分だけ開けているのだが、普通の京の人間にはまず来ら

れるような立地ではない。ここから見える秋の紅葉も絶景だが、夏は夏で濃い緑に包まれ、高地ゆえに時折涼風も
吹き抜ける居心地の良い場所だ。何よりも、京を眼下に一望できるこのロケーションが、京の支配を狙うアクラムの
お気に入りだった。

「…京に立ち昇る陽炎は(中略)…いずれ全てが私のものとなるのだ。京も、龍神も、…お前も」

神子を降ろして数歩前に立ち、用意して来たセリフをじっくりねっとりと語る。
しかしどうにも反応が無いので振り返ってみると、神子は憮然とした表情で地に視線を落としていた。本来ならこの

辺りで、もう神子とイイ雰囲気になるはずだと見込んでいたアクラムは、若干の焦りを禁じえない。

…やはり、無理やり連れて来たのが拙かったか。あの時屋敷を出ると困る理由でもあったのか?

わずかな動揺を押し隠しつつ、とりあえず相手が怒っている理由を探るため、話かけてみることにした。

「み…」
「――毎回毎回同じようなこと言わなくていいよ、アクラム。だいたいさ、いつも必ず最後には自分が支配するんだ、

みたいなこと言うけど、もうずっと状況がぜんっぜん変わってないの、ひょっとして気付いてないわけ?」


ぐさっっ!!


思いがけないカウンターパンチに思わずよろめいたアクラムだったが、どうにか踏みとどまった。まあ、龍神の神子な

らこの位の手応えがあっても良いだろう、と懲りずに気を取り直してみる。

「ふ、ふふ…、た、確かに今まではそうであったかもしれぬが、これから変わるのだ。お前が我が元に参る今日この

日こそが、輝かしい新たな時代の始まりとなろう」
「アクラムのところに行くなんて一言も言ってないけど。ていうか行く気無いんだけど。なに勝手に脳内補完してるの

よ。暑さでどうかしちゃったんじゃないの?」


ぐさぐさっっ!!!!


…きつい。きつすぎる。これまでも神子は、自分の元へ来いというアクラムの誘いを拒み通してきてはいたが、ここま

で嫌味な物言いはしなかった。強気を通り越して攻撃的である。何かあったとしか思えない。
実際、彼女の顔を見れば一時的に気が立っているだけのように見受けられる。
やはり半年以上のブランクが問題だったのか。再会の喜びが落ち着いたら、相手に怒りが沸いてきたとか、そのあ

たりかもしれない。

「随分とご機嫌斜めのようだな。そのように刺々しい態度では、折角の逢瀬も無粋なものとなろうに」
「よく言うわ。本当はフゼーが無くてブスイだろうとどうだっていいんでしょ、私なんかが相手じゃ」
「…どういう意味だ」
「本音を言ったら?ってこと。今日みたく、アクラムは私に色々誘いかけてくるけど、結局は龍神の力だけが目当てだ

ったわけよね。確かに最初はそう言ってたもんね〜。押してだめだったから引いてみた、ってとこ?」

神子が何故、眉を吊り上げ皮肉げにこんな事を言い出すのかアクラムにはさっぱり分からない。何の疑いも無く龍神

の神子は自分のものだと思っている彼は、ある意味常に本音を語っている。

「…押すも引くも、お前は私のものではないか。言うべきことを変えた覚えも無いが」

噛み合わないアクラムの返事が、爆発の引き金となった。

「だったらストレートに言えば!?黙ってお前の力を差し出せって!その方が内心で馬鹿にされてるよりよっぽどまし

なんだから!本当は私みたいなのは嫌いなんでしょ!なのに思わせぶりなことばっかり言って!アクラムの嘘つ
き!大っ嫌い!!ばかばかばかーーーっ!!」

突然の剣幕に圧倒された一瞬に、神子は駆け出してしまった。
どーせ私なんか何の可愛げもないわよー!うわーん!…という声が深く生い茂った樹々の間にこだましたのを聞い

て、ハッと我に返ったアクラムは慌てて神子を追いかける。

「ま、待て、何のことだ!いや、それより勝手に行くな!この辺りは野生の黒麒麟も出るのだぞ!神子!!」

破壊的な神気をぶん撒きながら走る神子を追うアクラムに、ある男が神子に仕掛けていた「地雷」の存在を、教えて

くれる者はいなかった…。


















『この間、たまたま鬼の首領と会ってね…なかなか面白い話が出来たよ。女性の好みを尋ねたのだが、彼は「気が

弱くて、従順で大人しい」女性が“たいぷ”なんだそうだ。
…いや、まだまだ彼も若いから仕方が無いのかな…?日陰で儚げに咲く花も美しかろうが、神子殿のように太陽に

向かって真っ直ぐに咲き誇る花の魅力が分からないというのは、勿体無いことだねぇ……ふふふふふ……』















こんな話書いといて何ですが、ライブの置鮎さんはそれはもうってなくらい素敵だったです。ネタにしてすみません。
2004/09/20up written by.yukie umehara

 

 

 

 

 

 

 

 

 


会員番号4番のユキエ様から戴きましたサマライネタの創作です。
そう、全てはサマライのあのライブドラマが始まりでした(笑)
ふとしたことからアクラムと友雅で好みの女談義をするのですが、
友雅のは別に当てはまらなかったのですが、作中にも出てきましたが
アクラムの語る好みのタイプが、何と

「心持ち気が強い方が良い」「歯向かってくるくらいが丁度いい」「負けん気の強いのが好き」

なんて、こりゃもー、鬼の首領に歯向かってる真っ最中の女子高生神子ちゃんを
指してるとしか思えないこの台詞!
勿論我々がライブ後ひとしきり盛り上がったのは言うまでもございません(笑)

このライブドラマだけでも、凄くオイシカッタのですが
おかげで更にこんな楽しい創作まで頂けましてライブドラマ様様です。
私は元ネタが全部分かるので爆笑しながら読ませて頂きました♪
アクラム可愛いし、あかねちゃんは強いしで、こんな二人も大好きですv
それに「何の疑いも無く龍神の神子は自分のものだと思っている彼は、
ある意味常に本音を語っている」という所がまさしく!って感じで
笑えました。ええ、本当にアクラムは心の底からそう信じてますよねー(笑)
そして・・・・・・友雅、やっぱりお前が原因かー!(笑)

ユキエさん、楽しい創作をありがとうございましたvv